2026-27シーズンのミネソタ・ティンバーウルブズは、ここ数年で最も面白いチームの一つになりました。
アンソニー・エドワーズはすでにNBAを代表するスコアラーです。しかし今季は、そこからさらに一段上の「MVP候補」「優勝チームの絶対的エース」へ進めるのかが問われます。
そのためにフロントは大きく動きました。ラメロ・ボールを獲得し、ジョナサン・クミンガも加入。一方で、ジュリアス・ランドルとナズ・リードはチームを去りました。さらに長年クリス・フィンチHCの右腕だったミカ・ノリACも、ポートランド・トレイルブレイザーズのHCへ引き抜かれています。
つまり今年のMINは、「昨季の続き」ではありません。エドワーズを中心に、オフェンスの仕組み、サイズ、テンポ、役割、そしてコーチングスタッフまで作り直したチームです。
今回はトレーニングキャンプ、Media Day、プレシーズンでのフィンチHCの発言を追いながら、MINが何を変えようとしているのかを約5000字で整理します。

まず結論|今年のMINは「ANTをPGから解放する」チーム
今季のMINを理解するうえで、一番重要なのはラメロの加入そのものではありません。
ラメロ加入によって、エドワーズを本来の役割へ戻せること。
昨季のエドワーズは平均28.8得点、FG48.9%、3P39.9%。数字だけ見ればキャリア最高クラスでした。しかしアシストは3.7本まで落ち、チームオフェンスもリーグ中位へ後退しました。
理由の一つが、ポイントガードとしての負担です。ボール運び、ピック&ロール、セットの開始、終盤の1on1、そして得点。あまりにも多くを彼一人に要求していました。
エドワーズ自身もMedia Dayで、
“I’m a natural 2-guard at heart.”
と話しています。つまり本人も、自分の本質はPGではなくSGだと理解しているということです。
ラメロが入れば、エドワーズは毎回トップからボールを運ぶ必要がありません。ウイングで待ち、ピンダウンから出てくる。キャッチしてすぐ攻める。弱いディフェンダーをスクリーンに巻き込む。あるいは守備で相手エースへエネルギーを使う。
これこそ今季のMIN最大の変化です。
エドワーズはすでに覚醒している。次は「効率のいいエース」へ
アンソニー・エドワーズは25歳。昨季は61試合で28.8得点、5.0リバウンド、3.7アシスト。さらにNBA公式によれば、キャッチ&シュートの3Pは49.6%でした。
一方で、3ポイント試投のうちキャッチ&シュートはわずか27%。つまり、非常に高い確率で決められる形を、チーム事情によって十分に使えていなかったわけです。
ラメロの加入は、ここを変えます。
フィンチHCも、オフェンスの中心自体は変えないと明言しています。
“Our offensive identity still flowing through Ant.”
ラメロを中心にするのではなく、ラメロを使ってANTをもっと危険にする。この考え方です。
プレシーズンのニックス戦でも、その可能性はすでに見えました。エドワーズは25分で26得点、FG8/16、3P5/8。ラメロは22分で10得点7アシスト。MINは122-104で昨季王者ニックスに勝利しています。
プレシーズンなので結果を大きく評価する必要はありません。ただし、エドワーズがボールを独占せずに26点を取れる形は、昨季とはかなり違います。
ラメロ・ボール加入でMINは「速く、楽しく、パスするチーム」へ
ラメロは昨季シャーロットで平均20.1得点、7.1アシスト。サイズのあるポイントガードで、早い段階から前へボールを飛ばせる選手です。
MINが彼に期待しているのはハーフコートのピック&ロールだけではありません。
フィンチHCは新しいオフェンスについて、
“Play faster, be a better passing team.”
と表現しています。
昨季までのMINは、ハーフコートでエドワーズやランドルがボールを持ち、そこから判断する時間が多くありました。
ラメロが入れば、リバウンドからすぐ走れる。Gobertへの早いロブ、McDanielsへのトランジション、Kumingaのランニング、そしてエドワーズへの早いキックアウトが可能になります。
さらにラメロには、チームの雰囲気を軽くする効果も期待されています。フィンチは、エドワーズとラメロの明るい性格が互いに良い影響を与えると見ています。
実際、今季のキャンプでは「joy」「energy」「together」といった言葉がMIN周辺で繰り返されています。昨季はムードの重さが課題だっただけに、これは戦術以上に重要かもしれません。

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ジョナサン・クミンガはランドルの代わりではない
もう一人の重要な補強がジョナサン・クミンガです。
クミンガは昨季ウォリアーズとホークスでプレーし、36試合で平均12.2得点、5.6リバウンド、2.3アシスト。今季MINではパワーフォワードとして先発が予想されています。
ただし、ランドルと同じ仕事をさせるのは違います。
ランドルはボールを持ってプレーを作り、昨季はチーム最多の平均5.0アシスト。ポスト、アイソレーション、ハンドオフなど、かなり多くの攻撃を担っていました。
クミンガはもっとシンプルでいいと思います。
フィンチHCも彼の価値を、
“Athleticism, skill, and power.”
と表現しています。
ラメロがボールを運び、ANTがディフェンスを引きつけ、Gobertがスクリーンする。その横をクミンガが45度カットする。あるいはショートコーナーからリングへ飛ぶ。トランジションでは誰よりも早く走る。
クミンガに必要なのは、毎回1on1で自分を証明することではありません。
リバウンド、ディフェンス、カット、トランジション、オフェンスリバウンド。
この5つを高い強度で続けられれば、MINにとってかなり理想的な4番になれます。
ランドルとナズ・リードを失った代償は想像以上に大きい
もちろん、新しいロスターにはリスクがあります。
ラメロを取るために、MINはナズ・リードをシャーロットへ送りました。ランドルも4チームトレードでブルックリンへ移籍しています。
この2人を同時に失ったことで、一番薄くなったのはフロントコートの得点とサイズです。
ランドルは昨季21.1得点、5.0アシスト。ナズはベンチからサイズと3Pを同時に供給できる、NBAでもかなり珍しいビッグでした。
特にナズの価値は、Gobertを下げてもオフェンスのスペースを保てること。5番としてスモールにすることも、4番で使うこともできました。
今季はその穴を、クミンガ、Trey Lyles、Joan Beringerらで分担する必要があります。
NBA公式もBeringerをGobertのバックアップセンター候補として見ています。若いBeringerがどこまでローテーションで耐えられるかは、実はラメロの出来と同じくらい重要です。
キャンプで見えたフィンチHCの狙い|「組み合わせ」を変える
フィンチの発言で興味深いのは、単に「ペースを上げる」だけではない点です。
彼はANTについて、昨季よりも戦略的に使えるようになると考えています。
ラメロがPGを担うことで、ANTを特定の相手と2メンゲームに入れる、弱いディフェンダーへスクリーンを当てる、あるいはオフボールで動かしてキャッチ直後にアタックさせることができます。
これはコーチ目線で見るとかなり大きな変化です。
昨季は「誰がボールを運ぶか」という問題を解決するだけで、エドワーズの使い方まで制限されていました。
今季はボールハンドラーが増えたことで、フィンチはマッチアップを見てANTを配置できるようになります。
そしてキャンプの雰囲気についても、フィンチは2023-24シーズンのプレシーズンに近い感覚があると話しています。
“It gave me a little bit of the same vibes this season.”
2023-24のMINは開幕から17勝4敗。最終的に56勝し、ウェスタン・カンファレンス・ファイナルまで進みました。
もちろん「キャンプの雰囲気がいい=優勝」ではありません。それでも、フィンチが過去最高クラスのチームと比較するほど手応えを感じているのは興味深いです。
プレシーズン3勝1敗|オフェンスの変化はすでに見え始めた
10月12日のニックス戦まで、MINはプレシーズン3勝1敗。
結果そのものより注目したいのは、オフェンスのテンポです。
ミルウォーキー戦では最初のポゼッションからラメロとクミンガのピック&ロールでレイアップ。直後にはラメロが3Pを決め、さらにANTの3Pをアシストしました。
インディアナ戦では敗れたものの、ラメロ14得点7アシスト、ANT19得点。ニックス戦ではANT26得点、ラメロ10得点7アシスト。
まだターンオーバーや守備の連携には粗さがありますが、「誰か一人が止まってボールを持ち続ける時間」は明らかに減っています。
ここは昨季との大きな違いです。
最大の懸念はミカ・ノリACの退団
ロスター以上に気になるのが、コーチングスタッフです。
ミカ・ノリは過去5シーズン、フィンチのトップアシスタントとしてMINを支えてきました。しかし今夏、ポートランド・トレイルブレイザーズのHCに就任しました。
これはかなり大きな損失です。
ノリは単なる「ベンチにいるAC」ではありませんでした。ローテーション管理を助け、対戦相手のセットプレーにも精通し、2024年プレーオフでフィンチが膝を負傷した時には、実質的にサイドラインでHC役まで担っています。
フィンチ自身もノリについて、
“We share a brain.”
と表現するほどでした。
現在のスタッフにはPablo Prigioni、Elston Turner、Kevin Hanson、Chris Hines、Jeff Newtonらが残っています。Star Tribuneによれば、Prigioniはオフェンス面、Turnerは事実上のディフェンスコーディネーターとして重要な役割を担ってきました。
それでも、トップACが抜ける影響は「戦術」だけではありません。
HCの判断を先読みし、タイムアウト中に情報を整理し、ローテーションを管理し、選手との間をつなぐ人間が変わる。
新しいロスターを導入する年だからこそ、これは軽視できないリスクです。
MINのベスト5はかなり魅力的。ただしベンチに疑問が残る
現時点で想定される先発は、
- PG:LaMelo Ball
- SG:Anthony Edwards
- SF:Jaden McDaniels
- PF:Jonathan Kuminga
- C:Rudy Gobert
です。
サイズ、アスレチック能力、ボールプレッシャー、トランジション。スターティング5だけを見ればリーグでもかなり面白いユニットです。
一方で、ベンチは昨季より読みづらい。
Ayo Dosunmu、Terrence Shannon Jr.、Jaylen Clark、Trey Lyles、Joan Beringer、Bones Hylandらが候補になります。Donte DiVincenzoのアキレス腱離脱もあり、セカンドユニットのシュートとプレーメイクには不確定要素があります。
特にGobertを休ませる時間に、リムプロテクションとリバウンドを誰が担うか。ここはシーズン序盤から見たいポイントです。
優勝候補か?|僕は「西のトップ4には入る。ただし完成は春」と見る
このチームは、開幕から完成している必要はありません。
ラメロ、クミンガという先発2人が新加入。ローテーションも変わり、トップACも交代。むしろ10月に完成している方が不自然です。
重要なのは、春までに、
- ANTがオフボールでも得点できること
- ラメロがターンオーバーを抑えながらテンポを上げること
- クミンガが役割を受け入れること
- Gobert不在時間の守備を作ること
- ノリ退団後のスタッフ構造を安定させること
この5つです。
ここが噛み合えば、MINにはファイナルへ行く力があります。
エドワーズはすでに平均28.8得点まで来ています。次に必要なのは30点取ることではなく、自分が楽に点を取りながら、チーム全体を強くすることです。
ラメロの加入は、そのための補強です。
まとめ|2026-27のMINは、ANTのために作り直された
このオフ、MINはかなり大きな賭けに出ました。
ランドルとナズ・リードを手放し、ラメロを獲得。クミンガを加え、より若く、速く、アスレチックな構成へ変更しました。
一方で、フロントコートの厚みは落ち、ミカ・ノリも退団しました。
つまり、明確に良くなった部分と、明確に不安になった部分が両方あります。
ただ、一つだけはっきりしています。
このチームは、アンソニー・エドワーズが最も強くなれる形を作ろうとしている。
PGをやらせるのではなく、SGへ戻す。ボールを持たせ続けるのではなく、ラメロに作らせる。クミンガを走らせ、Gobertにスクリーンさせ、McDanielsに守らせる。
そして最後に試合を決めるのはANT。
2026-27は、エドワーズが「スター」から「MVP級のエース」へ変わるシーズンになるかもしれません。
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