

画像:ANTA / 361° 各公式
※2026年9月15日時点の情報です。
中国のバスケットボールと聞いて、最初にヤオ・ミンを思い浮かべる人は多いと思います。中国でバスケが人気になった理由は一つではありませんが、2002年にヤオがNBAドラフト1位でヒューストン・ロケッツへ入ったインパクトはやはり別格でした。
FIBAは、ヤオのNBAでの活躍によって中国で何百万人もの人々がバスケットボールをプレーし、NBAを追うようになったと振り返っています。2008年北京五輪の中国対アメリカ戦については、CCTV関係者の推計として「10億人近い視聴者」の可能性まで報じられました。推計値ではありますが、当時の熱狂を象徴する数字です。
FIBA:ヤオ・ミンが中国バスケットボールに与えた影響
FIBA:北京五輪 中国対アメリカ戦の視聴規模
ヤオ、易建聯(イー・ジャンリャン)、孫悦(スン・ユエ)、周琦(ジョウ・チー)らがNBAで注目された時代から顔ぶれは変わりました。それでも中国のバスケ熱は強い。そして今、その巨大な市場とNBAをつないでいるのが、ANTA、Li-Ning、361°、Rigorerといった中国発のブランドです。
カイリー・アービング × ANTA|“契約選手”ではなくクリエイターへ

まず外せないのがカイリー・アービングです。長年Nikeの顔の一人で、KyrieシリーズはNBA選手にも一般プレーヤーにも非常に人気でした。
Nikeとの関係は2022年に終了します。ここは誤解されやすいですが、COVID-19ワクチンをめぐる騒動が直接の契約終了理由ではありません。Nikeが関係を停止し、その後契約終了を発表した直接のきっかけは、カイリーが反ユダヤ主義的内容を含む映画へのリンクをSNSで共有したことをめぐる問題でした。
NBA.com:NikeとKyrie Irvingの契約終了
その後に選んだのがANTAです。面白いのは、単なるシューズ契約ではないこと。2023年、カイリーはANTA BasketballのChief Creative Officer(CCO)に就任し、自分のシグネチャーだけでなく、選手やアーティスト、デザイナーとのコラボレーションにも関わる立場を得ました。
だからKAIシリーズは、いかにもカイリーらしい。KAI 3でも文化的モチーフや独特なストーリーをデザインに入れながら、フルレングスのNitrogenクッショニング、カーボンプレート、TPUサポートなど競技用の性能も詰め込まれています。
カイリーの世界観を「広告に使う」のではなく、商品そのものに入れている。中国ブランドがNBAスターを獲得できる理由を象徴する関係だと思います。
ANTA公式:Kyrie Irvingとの契約とCCO就任
ANTA公式:KAI 3のデザインとテクノロジー
公式商品ページ:ANTA KAI 3 “Magnetic Energy”を見る
ニコラ・ヨキッチ × 361°|MVPでもNikeではシグネチャーなし

次はニコラ・ヨキッチ。現役最高峰の選手を一人挙げろと言われれば、名前を出す人はかなり多いでしょう。
ヨキッチは長くNikeを履き、HyperdunkやG.T. Jumpを愛用しました。しかしMVP、NBA優勝、ファイナルMVPまで獲得しても、Nikeから正式なシグネチャーシューズは発売されませんでした。
そこで2023年末に361°と複数年のシグネチャー契約を締結。同ブランドにはチームメートのアーロン・ゴードンも所属しており、ヨキッチはついに自分の名前を冠したJOKER 1を手にします。
世界最大級のブランドの一選手でいるのか、それとも別ブランドの中心になって自分のシリーズを持つのか。この違いはスターにとってかなり大きいはずです。
361°公式:Nikola Jokićとのシグネチャー契約
361°公式:JOKER 1
公式商品ページ:361° JOKER 2を見る
ジミー・バトラー × Li-Ning|個性派スターと相性のいい関係
Li-Ningではジミー・バトラーも大きな存在です。2020年に加入し、JBシリーズを展開。Li-Ning自身もJimmy Butler 3をプロ向けバスケットボール製品の主力として扱ってきました。
バトラーはプレースタイルもキャラクターも強い選手です。巨大ブランドの大勢いる契約選手の一人ではなく、自分のラインを持つ形はかなり相性がいいように見えます。
前回の記事でも触れた通り、ステフィン・カリーがスニーカーフリーエージェント中にLi-Ningを試した際、バトラーのシューズも実際に着用しました。カリーのLi-Ning入りを考える上でも、バトラーは一つの橋になった選手です。
Li-Ning 2024 Annual Results:Jimmy Butler 3を含むバスケットボール製品
クレイ・トンプソン × ANTA|“China Klay”になるほどの人気
中国ブランドとNBA選手の関係を語るなら、クレイ・トンプソンも欠かせません。クレイは長年ANTAのKTシリーズを履き、2026年にはANTA Basketball史上初の生涯契約を結びました。
さらに中国では何度もツアーを行い、ファンから「China Klay」と呼ばれるほどの人気者に。ESPNの取材では、アメリカ国内のツアーでは経験できないほど多くのファンが中国で待っていることに驚いたと語っています。
ここが中国ブランドの強さです。アメリカではLeBronやKDほど広告の中心でなくても、中国では街中の広告、ショップ、イベントを通じてブランドの顔になれる。選手自身の知名度を別の巨大市場で一段上げられます。
ANTA公式:Klay Thompsonとの生涯契約
ESPN:中国ブランドがNBA選手に与える巨大な露出
オースティン・リーブス × Rigorer|若いスターにも中国ブランド
今の流れを象徴するのがレイカーズのオースティン・リーブスです。RigorerはLi-NingやANTAほど日本では有名ではありませんが、2023年にリーブスと契約してAR1を発売。その成功を受けて長期延長し、AR2へつながりました。
リーブス本人も、中国のファンの支えがARシリーズの成功に大きかったと話しています。若い選手が早い段階から自分のシグネチャーを持つルートとして、中国ブランドは完全に現実的な選択肢になっています。
公式商品ページ:Rigorer AR2を見る
他にも中国ブランドと契約するNBA選手は多い
| 選手 | ブランド | 主なシリーズ |
|---|---|---|
| Aaron Gordon | 361° | AGシリーズ |
| CJ McCollum | Li-Ning | CJシリーズ |
| Fred VanVleet | Li-Ning | Li-Ning契約選手 |
| D’Angelo Russell | Li-Ning | Li-Ning契約選手 |
アーロン・ゴードンは2020年から361°と組み、ヨキッチより先に複数世代のシグネチャーを展開。CJ・マカラムもNikeからLi-Ningへ移る際、ビジネス面を含む「違う機会」があったと説明しています。
361°公式:Aaron GordonとAGシリーズ
NBA.com:CJ McCollumがLi-Ningを選んだ理由
なぜNBAスターは中国ブランドを選ぶのか?
ここまで見ると、理由は単純に「お金」だけではないと思います。
まずブランド内での立ち位置。Nikeには多くのスーパースターがいます。一方で361°に移ったヨキッチはブランドの中心となり、KyrieはANTAのCCOになった。
次にクリエイティブ面の自由度。Dwyane Wadeが2012年にJordan BrandからLi-Ningへ移った際にも、ESPNは株式持分に加えて大きなクリエイティブコントロールを得たと報じています。この成功が、後の選手たちに「中国ブランドでも自分のブランドを作れる」と示した意味は大きいでしょう。
そして中国市場の大きさ。中国でブランドの顔になれば、広告、店舗、SNS、ツアーを通じて巨大な露出を得られます。
もう一つは、シンプルにシューズの性能が上がったことです。私の周りの草バスケでも中国ブランドを履く人が増え、評判はかなりいいです。Li-NingはBOOM系フォームやカーボン構造、GCUアウトソールを展開し、ANTAのKAI 3にはカーボンプレートとNitrogenクッショニング、361°のJOKERシリーズもクッション、安定性、トラクションを強く打ち出しています。
昔の「中国ブランド=安い代替品」というイメージだけで、今のトップモデルを評価するのはもう難しいと思います。
そして最後に、ステフィン・カリー × Li-Ning
この流れの最後に、ついにステフィン・カリーまで加わりました。
2026年6月、Curry BrandとLi-Ningは長期パートナーシップを発表。カリーは単なる契約選手になるのではなく、Curry BrandそのものをLi-Ningと共同で世界へ広げていく形です。報道では10年・4億ドル超。しかも、より高額なオファーがあった中でLi-Ningを選んだとも伝えられています。
カイリー、ヨキッチ、バトラー、クレイ、リーブス。そしてカリー。
ここまで並ぶと、中国ブランドはもう「Nikeやadidasと契約できなかった選手の行き先」ではありません。自分のシグネチャーを持ちたい、自分の世界観を商品に反映したい、中国を含む巨大市場でブランドそのものを育てたい選手にとって、積極的に選ぶ候補になっています。
関連記事:なぜステフィン・カリーはLi-Ningを選んだ?Under Armourとの12年と“スニーカーFA”の答え
【2026-27 NBA】注目バッシュ5選|ケイド、ウェンビー、ANT、ハーデン、カイリー
まとめ|次に中国ブランドと契約するスターは誰なのか
中国のバスケットボール人気は、ヤオ・ミンの時代からNBAと深く結びついてきました。今は「中国のファンがNBAを見る」だけではなく、「中国ブランドがNBAスターと一緒に商品を作る」段階まで来ています。
個人的には、これからさらに契約選手は増えると思います。Nikeやadidasが弱くなるというより、選手側に選択肢が増えた。ブランドの規模だけでなく、「自分をどれだけ中心に置いてくれるか」「自分のアイデアをどこまで商品にできるか」が契約を決める時代になってきています。
私たち一般のプレーヤーにとっても、競争が増えるのは歓迎です。ブランド同士が性能、価格、デザインで競えば、面白いバッシュはもっと増える。
次にNBAの誰が中国ブランドを選ぶのか。そして日本のコートでANTA、Li-Ning、361°、Rigorerを見る機会がどこまで増えるのか。今後もかなり注目です。

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